ナラティヴ・セラピー実践トレーニングコースの説明会(録画ビデオ)のご案内

本実践トレーニングコースは、リニューアルしてパイロットコースとして再スタートしますので、以下の通り説明会を開催しました。

日時:2023年10月19日(木)19時30分~21時

この内容はビデオ録画いたしました。そのビデオは次のサイト(VIMEO)から視聴することができますので、参考にしてください。

https://vimeo.com/user/125499912/folder/18192837

ナラティヴ・セラピー実践トレーニングコースの新しい選考方法については、次のリンクをごらんください。

https://npacc.jp/2023/3828/

【2024年度からのコースはリニューアルします!】

ナラティヴ実践協働研究センターが発足してから、ナラティヴ・セラピー実践トレーニングコースを提供し始め、2019年、2020年、2022年の3期にわたって提供してきました。3回を終えて、本実践トレーニングコースに工夫できそうなところもみえてきました。2024年からのコースは、次の方針に基づきリニューアルすることにしました。2024年からのスタートは、新しいプログラムでのパイロットコースとなります。

○ カウンセリングの鍵は会話そのものです

リニューアルの話をする前に、これまでと変わらずに中心に据えて取り組んできたいことを述べておきます。それは、自分に話をしようとしてくれる人とどのような会話をすることができるのかに取り組むことです。言い換えるとすれば、ナラティヴ・セラピーの理論について検討したり理解を深めることは重要なものですが、それだけでなく、自分自身が実際に目の前の相手とどのように会話をするのかを大切にしたいと思っています。

○ これまでに学んできた人たちと共に学びを深めます

実践トレーニングコースでは、最大12名の受講者で学びを深めてきました。一方で、同じ学びの状態にある人だけで話をするよりも、今まで学んできた人とも一緒に検討する機会を持った方がより発展的な内容になります。よって、次のコースでは、受講者の人数を10名ほどとします。そして、毎回数名程度ですが、すでに学んだ人たちも参加することになります。

○ ファシリテーターを交代制とします

これまで年度毎に担当者を決めて、学びをファシリテーションしてきました。これは、学校のような担任制のような側面が強くなるため、ファシリテーションを交代ですることにします。このことによって、いろいろなファシリテーターとのつながりが得られるのではないかと考えています。
ファシリテーター:横山克貴、白坂葉子、国重浩一、浅野衣子、松本寛子

○ 外部講師を呼ぶ際には、これまでに学んできた人たちも参加します

本実践トレーニングコースの2年次の過程において、外部から講師を招いています。その講師の内容も毎年更新されており、これまで学んだ人たちとも共有しておきたいと考えています。そのため、外部講師を呼ぶ時には、これまでの受講生が入れるような会場を確保しておこないます。このような機会は、これまで学んできた受講生を知る機会になると思います。

○ 年功序列的な呼び方をやめます

今まで、2019年にスタートした人たちを1期生、その後、2期生、3期生と呼んできましたが、これは、年功序列的な発想を生むために廃止します。代わりに、ニュージーランドの鳥の名前をつけて呼ぶことにします。
 2019年スタートしたグループ:TUI
 2020年スタートしたグループ:KIWI
 2022年スタートしたグループ:KEA
 2024年スタートするグループ:KAKA
 20xx年スタートするグループ:Pukeko

【受講するにあたってお伝えしておきたいこと】

本実践トレーニングコースが、一般的なトレーニングプログラムとは異なることをお伝えしておきたいと思います。それは、受講にあたって、みなさんの期待や希望に添えないことがないようにしたいためです。

○ まったくナラティヴ・セラピーについて知らない人を対象にしていません

本実践トレーニングコースは、ナラティヴ・セラピーを聞いたことも見たこともないという人を対象にしていません。受講前に、NPACCなどでおこなっているワークショップに参加したり、ナラティヴ・セラピー関係の書籍を読んだりして、マイケル・ホワイトやデイヴィッド・エプストンのナラティヴ・セラピーのことをある程度知り、自分なりにナラティヴ・セラピーに魅力を感じている人を対象にしています。

○ ナラティヴ・セラピーの講義はありません

本実践トレーニングコースでは、それぞれが課題図書を読む必要があります。そして、さまざまな側面について、一緒にディスカッションしながら、学びを深めていきます。そのため、講義のようなものはあまりありません。ナラティヴ・セラピーの理論的背景や技法的な側面について学びたいのであれば、ナラティヴ・セラピー・ワークショップ・シリーズの受講を検討してください。

○ 他の受講生とのディスカッションがメインとなります

学びを深めていくためには、他の人とディスカッションをすることが必要だと考えています。これは、人の語りをしっかりと聞き、自分の考えを伝える必要があります。これは徐々に慣れていくものですが、このことがあることをご理解ください。

○ マイケル・ホワイトの文章を読むことを求められます

2年間の実践トレーニングコースのひとつの目標は、マイケル・ホワイトの文章が読めると感じられるようになることです。そのためには、この2年間、マイケルの文章に向き合い続けることが求められます。

○ 文章(エッセイ)を何度も書くことが求められます

本実践トレーニングコースを修了するためには、コースに受講するだけでなく、ショートタームアサインメントとロングタームアサイメントを書く必要があります。コースを受講するだけでも、参加証明書を発行しますが、本実践トレーニングコースが修了されたと見なされるためには、アサイメントを受理される必要があります。その時に、修了証を発行します。

○ 参加証明書と修了証を発行しますが、認定資格は発行しません

このコースにおいて最後に参加証明書と修了証を発行しますが、「ナラティヴ・セラピスト」という肩書の認定書は発行しません。なぜならば「ナラティヴ・セラピスト」という名は、この土台をスタート地点とした試行錯誤の実践を続けることを意味するのであり、何らかのコース修了によって付与されるものではないからです。付け加えるならば、私たちは資格発行ビジネスに与したくないのです。

○ 新たな学びと、これまでの学びをほぐすこと

ナラティヴ・セラピーを学ぶこと、つまりは、ポスト構造主義的、社会構成主義的な発想を学んでいくことは、社会文化的に強く根づいている常識や当たり前とすること、そして今まで学んで来たことを改めて見直すというプロセスが必要となります。つまりは、これまでしっかりと握りしめていたことを、ゆるく保持することが必要となります。これを、アンラーニング(これまでの学びをほぐす)と呼びます。このプロセスは、想像以上に厄介なことがありますので、お伝えしておきたいと思います。

【ナラティヴ・セラピーとは…】

オーストラリア人のマイケル・ホワイトとニュージーランド人のディヴィッド・エプストンという、2人のセラピストの貢献を中心に形作られた治療的枠組みのことです。これは、精神医学や心理学の疾患名や障害名、分類のような見方から人を理解するのではなく、すべての人には自分の人生を生き抜いていくことができる資質、能力、可能性があるのだと考え、会話を通してそのような可能性を探っていくアプローチです。

【このコースが目指す到達地点】

このコースは、ナラティヴ・セラピーの哲学的な姿勢と基本的な技術や言葉遣いを対話によって学び、自分の一部としていくことを目指します。トレーニング修了後には、受講者の方が、それぞれの領域で自分なりにナラティヴの思想に基づいた実践を積み上げられるような土台が形成されることを目的とします。

「ナラティヴの学び」とは…

ナラティヴ・セラピーは、社会構成主義やポスト構造主義の思想に貢献した哲学者や思想家のアイディアを背景とした哲学的な姿勢をヒントに、実践を作り上げてきました。そして同時に、会話実践をジャズの即興演奏に例えるなど、会話の持つ即興的で創造的なプロセスにもしっかりと目を向けます。

ナラティヴ・セラピーを学んでいくプロセスにおいては、その思想や哲学を理解する取り組みの中で、会話や相手、世界の見方を新たにしていく過程を要します。加えて、そのようなアイディアを、即興的で創造的な仕方で、自身の言葉遣いの中に反映させていく、実践の感覚や技術、経験に取り組んでいくことも必要となります。

このようなことは、「正しい知識ややり方を誰かに教わる」という形で、一朝一夕に身につくことはありません。「多くの文献やアイディア、実践に触れながら、自分で考え、実践して到達していく」プロセスが不可欠なのです。

本トレーニングコースの特長

実践とディスカッションの往還

このトレーニングコースでは、ナラティヴ・セラピーを理解するヒントとなるような、さまざまなコンテンツやワークに取り組みながら、みなで振り返り、ディスカッションしていく場を豊富に用意していきます。また、ナラティヴ・セラピーの会話をクライエントとして体験すること、その会話をそばで見て参加すること、会話自体を自分で試していくこと、そうした実践に触れる取り組みを多く用意していきます。こうした実践ベースおよびディスカッションベースの学びを行き来することで、受講者の方が自分で学びとっていくプロセスに貢献していきたいと考えています。

共にナラティヴと向き合う2年間

ナラティヴのアイディアや実践に集中的に向き合う2年間となります。それは、表面的には理解しがたいものにじっくり向き合ったり、新しいがゆえに違和感のある会話の技術や言葉遣いを体に馴染ませていくための時間となるでしょう。

そのような取り組みを自分一人だけで貫徹するのは、不可能ではないものの容易でもありません。同じものを学ぶ仲間やファシリテーター、学びを支える環境は、私たちが絶えず考え続け、話し合い、理解を進めていくために必要不可欠なものとなるでしょう。

実践とOW&R(オウル)チームによる学び

OW&R(オウル)チームとは、「アウトサイダーウィットネス&リフレクティングチーム」を呼びやすくしたものです。これは、OW&Rチームという第三の立場の人間が、カウンセラーと相談者のカウンセリングの場に同席し、適切なタイミングで会話に参加していくという、ナラティヴ・セラピーが提案する治療的実践です。

受講者は、このOW&Rチームに参加することで、実際のカウンセリングに同席し、そこにコミットしていく機会を得ることになります。これは、デモセッションやロールプレイ以上の学びの機会となると考えています。

トレーニングプログラム

このトレーニングコースは、二年間ですべてのカリキュラムに取り組んでもらうことによって、十分に学ぶことができるように設計されています。

一年次および二年次は、それぞれ年8回、計16日間の課程となっています。

一年次課程

文献購読やさまざまなコンテンツのディスカッションを通して、ナラティヴ・セラピーのアイディアや実践の中核をなす、哲学や思想的背景への基礎的な理解を深めていきます。そして、実際に会話の練習やワークも行いながら、ナラティヴ・セラピーの持つ言葉遣いに少しずつ慣れていきます。また、受講者自身がクライアントとして、ナラティヴ・セラピーのセッションを受け、その内省や逐語の振り返りなども行っていくこと、OW&Rチームとして実際のカウンセリングに同席し、参加していくことで、実践への理解を深めていきます。

二年次課程

文献購読や会話のワーク、ディスカッションも進めながら、ナラティヴのアイディアが息づくさまざまな実践を通して理解を深めていきます。また、自分自身でもカウンセリング実践を行い、その逐語録やビデオの振り返りを通して、より実践的な学びに進んでいきます。そして、自分自身の関心についての自由課題に取り組むとともに、コース修了に向けた小論文(エッセイ)の執筆を行います。

豊富なアサインメント

16日間のプログラムに加えて、ナラティヴ・セラピーについてじっくり学んでいくためのアサインメント(課題)も豊富に用意しております。以下は、その一部になります。

  • 文献購読
  • 会話のワークやディスカッション
  • ナラティヴ・セラピーをクライエントとして体験し、そこからカウンセラーとしての考察に取り組む(一年次)
  • 自身の関心に基づく自由課題や、コース修了のための小論文(エッセイ)の執筆(二年次)

エッセイについて

「英語のessayはフランス語の「試す、試みる」を意味する動詞essayerから発している。(中略)当時は文学様式としての「随筆」はなく、エセーとは「試行、吟味、試験、経験、実験」などの意味を含んでおり、モンテーニュ自身のことばによれば「判断力の試み」であった。つまり、『随想録』は自分自身が何者であるのかを知ろうとする基本的な態度から発して、思索を展開しているのである」(日本大百科全書(ニッポニカ)より引用)

『自由な形式で、通常はある1つのテーマをめぐって書かれた散文。語源は「試み」の意であるフランス語のessaiより。この語を初めて近代的な意味で用いて書名とした、フランスの思想家ミシェル・ド・モンテーニュの『エセー』(Essais, 1588年)は、幅広い知識と教養に裏付けられた、批判的、複眼的な視野で、深い人間観察、人間探求を実践、この分野の古典となった。話の筋道が整合的な体系に回収されてしまうことを何より忌避して、複数の論理や断片的な思考に積極的に身を任せ、脱線や逸脱や逡巡をいとわない。安直な全体化に執拗に抵抗する、そんな自由な思考の「試み」にこそ、エッセイというジャンルの本質がある(P.グロード、J‐F・ルエット『エッセイとは何か』、1999年)』(「知恵蔵」より引用)

プログラム日程

一年次課程

(二年次の日程は未定です。2024年の中頃にはお伝えします)

2024 3月8日~10日 えぬぱっくリトリート(任意参加)大阪で開催予定
1:5月11日、12日 イントロダクション:お互いとつながる/自分の声で語ること/コースの進め方など
2:6月15日、16日 ナラティヴ・セラピーの実際に触れる (国重参加)
3:7月27日、28日 私たち・支援者を形作るディスコース
4:9月7日、8日 ナラティヴ・セラピーを取り巻く言語
5:10月19日、20日 マップ1:外在化する会話
6:11月30日、12月1日 デモンストレーションから接近する再著述 (国重参加)
7:1月18日、19日 マップ2:再著述する会話
8:2月22日、23日 結局、ナラティヴ・セラピーってなに?
2025 3月14日~16日 えぬぱっくリトリート(任意参加)開催地未定

えぬぱっくリトリート(合宿)

トレーニングプログラムに必須のものではありませんが、このトレーニングコースに関わる人たちが一堂に会する合宿を、年に一度行おうと考えています。これまでの受講した人たち、受講中の人たち、受講はじめる人たちが参加できるようにします。ここは、ナラティヴ・セラピーについての研修をするのではなく、緩やかで楽しいつながりの中で、ナラティヴを学ぶ仲間と対話や交流の機会を十分持てるような時間となることを期待しています。

なお、NPACCリトリートの参加費用は、 コース受講費には含まれていません。別途必要となります。

ファシリテーター

  • 横山克貴(臨床心理士、公認心理師 東京大学大学院修士課程修了 ワイカト大学客員大学院生として一年間滞在)
  • 白坂葉子(臨床心理士 鹿児島大学の臨床心理士養成のための専門職大学院卒)
  • 国重浩一(臨床心理士 ワイカト大学カウンセリング大学院卒)
  • 浅野衣子(キャリア開発カウンセラー キャリアコンサルタント 同志社女子大学卒)
  • 松本寛子(臨床心理士、公認心理師 東京女子大学大学院卒)

会場

NPACC事務所 東京都中央区日本橋久松町11-8 シティプライム日本橋118 4階A

なお、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのために、オンラインで受講することもできるように配慮しましたが、現在では対面での研修に何の制約がありませんので、会場で参加する必要があります。オンラインで参加することを見込んで、受講開始することはできませんので、ご理解ください。

募集要項

募集期間:  2023年11月30日(木曜日)まで(課題のエッセイの提出をもって、応募完了と見なします)

募集人数: 10名程度

コース受講費:年30万円 +消費税

合宿に参加する際の合宿費用、トレーニングコースで必要となる文献の費用などは含まれません。なお、二年次課程を受講する際の年間の費用も同じく30万円+消費税となる予定です。

応募方法:  https://forms.gle/JJqtqE7RcsKeTdGJ6

応募に際しては、以下のテーマでエッセイを書いていただきます。

テーマ:「私がナラティヴ・セラピーを学びたいわけ」(最大6000字程度、文字数は選考には影響しません)

このエッセイを通じて、受講者のことを知りたいと思っています。ナラティヴに魅力を感じるためには、今までに大切にしてきたこと、思い、経験など、これまでのことがあったと思います。差し支えない範囲でこれらのことを綴っていただき、その上で、このナラティヴ・セラピーを学ぶことが、受講者のこれからの人生、職業、実践について大切なことになるのかについて教えてください。なおこのエッセイは、知っているナラティヴに関する知識を確認するためのものではありません。

上記のフォームから申し込んだ後で、次のメールアドレス(narrative@npacc.jp)にエッセイとご自身の写真をお送りください。ファイル形式は何でもかまいません。写真はカジュアルなもので構いません。

応募条件

  • 2年間を通してトレーニングコースに参加できる人
  • 多少なりともナラティヴ・セラピーに取り組んできた人
  • 対人援助職に就いている方、あるいは援助を提供する立場としてナラティヴ・セラピーを学ぼうとする人

選考について

  • 申込フォームに記入していただいた内容
  • 応募時に提出いただいたエッセイ
  • 2024年1月上旬までに結果をお伝え致します

 (書類審査にて選考が難しい場合には、インタビューをお願いすることもあります)

連絡先

ナラティヴ実践協働研究センター

メールアドレス:narrative@npacc.jp

担当:横山克貴、白坂葉子、国重浩一

何か不明なことなどがありましたら、遠慮なく連絡してください。ナラティヴに興味関心を持っていただき本当にありがとうございます。