デヴィッド・パレ著「協働するカウンセリングと心理療法」出版記念シンポジウム
2022-02-07「ナラティヴ・セラピー・ワークショップ・シリーズ 2021」エッセイ「ワークショップ・シリーズに参加して」
2022-02-17お母さんのおなかにいる赤ちゃんに、異常がないか調べる検査を「出生前検査」といいますが、そのうち染色体を調べるものを「出生前遺伝学的検査」といいます。染色体を調べる検査は通常の妊婦検診には含まれないため、希望する場合には自費でしなければなりません。
何らかの疾患がある可能性を生まれる前に知っておくことで、より安心して妊娠期間を過ごすことができますし、たとえ疾患が見つかっても、生まれたあとの治療について事前に知ることができますし、何よりも心の準備をするのに役立つ場合があります。
その一方で、事前に知ることによって苦悩するかもしれません。検査結果次第では、人工妊娠中絶につながることも少なくありません。
この出生前遺伝学的検査を受けるかどうか迷ったり、実際に受けた妊婦やカップルが抱えている悩みとはどのようなものでしょうか。少し状況を想定してみましょう。
自分にはすでにダウン症の子どもがいる。大切に想い、日々愛情を感じながら育てているが、次の妊娠では出生前遺伝学的検査を受けようか迷っている。
出生前遺伝学的検査を受け、赤ちゃんが染色体異常症と診断された。妊娠を継続するかあるいは中断するか早く決めなければならないが、パートナーと意見が合わない。
このように出生前遺伝学的検査は、さまざまな倫理的ジレンマをもたらす可能性があります。こうしたジレンマに対する正解はなく、この検査を受けるかどうか、結果を知ってからどのように対処するのかは、本人が、この検査に関する最新で正確な情報を十分に理解した上で、自律的に意思決定をしていく必要があります。この意思決定は難しく悩ましいものになることが多いものです。そのため、この検査の前後で、臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーなど専門家によって、慎重かつ丁寧な対応(カウンセリングなど)が行われています。
この出生前遺伝学的検査の情報提供について、2021年5月に公表された厚生科学審議会「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」(※1)で今後の在り方が示され、これからはすべての妊婦に出生前検査を周知する方針となりました。このため、情報提供を受ける妊婦は格段に増え、検査について悩むカップルも増えることが予想されています。また、これらの相談支援体制として、特定の専門家だけでなく、福祉や地域社会の場で、さまざまな対人支援職が対応するための体制づくりが始まっています。
※1: NIPTとは、英語のNoninvasive prenatal genetic testingの略で、無侵襲的出生前遺伝学的検査のことです。厚生科学審議会の報告書は、次のリンクから入手することができます。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_145015_00008.html
本イベントにおいて、今後ますます重要になっていくことが容易に予想されるこの出生前検査の領域において、「いかにして、このことについて話すことができるのだろうか?」ということを考えてみたいと思います。
話題提供者として、ご自身の「赤ちゃんの誕生の前に知ってしまったこと」を話そうとして話せず、たいへん苦しい体験をした新里早紀さんをお招きします。新里早紀さんは、臨床心理士で、鳥取大学で認定遺伝カウンセラーになるべく勉強と研究に取り組まれています。また、ナラティヴ実践協働研究センターのナラティヴ・セラピー・ワークショップ・シリーズで、ナラティヴ・セラピーも学んだところです。
今回は、出生前検査についての具体的な知識や情報提供のノウハウを提供することはできません。しかし、そのような場で行われるカウンセリングというものの大切さと、そこにナラティヴ・セラピーの姿勢がどのように生きてくるのかについて、一緒に考えていく機会になればと思っているところです。
興味ある方は是非とも参加してください。
〈イベントの詳細〉
日時:2022年3月20日(日)10時~12時
開催方法:ZOOMオンライン
参加費:無料
プレゼンター:新里早紀 臨床心理士
鳥取大学大学院医学系研究科博士前期課程
(認定遺伝カウンセラーコース)
ファシリテーター:国重浩一、横山克貴、白坂葉子
申込先: https://geneticcounseling2022.peatix.com
主催:ナラティヴ実践協働研究センター