えぬぱっくの本棚(7冊目)『再著述実践を強化する』

えぬぱっくの本棚(6冊目)『連帯のスーパービジョン』
2025-01-23
えぬぱっくの本棚(6冊目)『連帯のスーパービジョン』
2025-01-23

えぬぱっくの本棚(7冊目)

論文『再著述実践を強化する』(Intensifying the preferred self)

Marie-Nathalie Beaudoin (2019) Intensifying the preferred self: Neurobiology, mindfulness and embodiment practices that make a difference. The International Joumal of Narrative Therapy and Community Work 2019 No. 3. pp.96-105.

 

■「えぬぱっくの本棚」について

 カウンセリングやセラピーに取り組む中では様々な書籍や文献に出会うことになると思います。そうして魅力的な本に出会った時、その本の中身や、そこから着想を得て膨らませたアイデアを、誰かと話したくなった経験は誰にもあるのではないかと思います。NPACCでも、しばしばオフの時間にそうした会話が展開するのですが、この会話をもう少し広げてみることはできないだろうか、と思いました。そこで、その時々に出会い、魅力を感じた書籍や文献をシェアし、興味を持った人たちで会話を広げていくような機会を作ってみたいと考えています。

 取り扱う書籍や文献は、NPACCの興味関心上、ナラティヴ・セラピーに関係するものや、近い領域のものになると思いますが、それに限らず大切さや興味深さを感じたものがあれば積極的に取り組んでいきたいと思います。

 形としては、プレゼンターが、読んで惹かれた、あるいは発想を膨らませた本の内容をみんなで読んだり、プレゼンターが説明したり、考えたことをシェアしたりしつつ、小グループでのディスカッションなどを通して、参加している人たちで、それを基に会話できる時間を設けていく予定です。

 平日夜に2時間半ほどの時間で開催してみようと思っています。連続講座のようなものではありませんので、1回ごとにお申込みいただけます。なお、このイベントの開催は、本との出会い次第ですので不定期になります。

 参加したかったけど時間が合わなかったという人のために、その時のプレゼンテーションを録画して、後日視聴もできる形を作っておきたいと思います。

 

■ 今回扱う書籍・文献

Marie-Nathalie Beaudoin (2019) Intensifying the preferred self: Neurobiology, mindfulness and embodiment practices that make a difference. The International Joumal of Narrative Therapy and Community Work 2019 No. 3. pp.96-105.

本論文は、ダリッチ・センターのホームページからダウンロードすることができます。

https://dulwichcentre.com.au/wp-content/uploads/2019/10/Journal-FULL-3-2019.pdf

 オーストラリア、ダリッチ・センターで、マイケル・ホワイトの後を引き継いで活動しているデイヴィッド・デンボロウは、ダリッチ・センターの機関誌International Joumal of Narrative Therapy and Community Workに、「神経科学の道を旅する――ナラティヴ実践、神経科学、身体、感情、そして情動論的転回」という論考を寄せています(2019 No. 3. pp.13-53)。

 この論考は、小森泰永さんによって訳され『ナラティヴと情動』という書籍の中に収録されています。

 『ナラティヴと情動』の中には収録されていないのですが、マリー=ナタリー・ボードインは、この機関誌の中にデンボロウの論考に対する応答(インタビュー記事)を寄せています。

 ホードインは、ニュージーランド出身でワイカト大学でナラティヴ・セラピーを教えていたジェラルド・モンクとともに「Narrative Practices and Emotions」という書籍を2024年に出版していますので、ナラティヴ・セラピーに取り組みながらも、情動や身体性について考察しています。

 これまで、ナラティヴ・セラピーの文献では、情動や身体性については、あまり論じられてきていませんでした。
 
 そこで今回は、この機関誌に収録されているボードインの論文を取り上げ、ナラティヴ実践と情動や身体性との関係について考えていきます。

 話し手は、佐藤衛さんで、組織開発の領域から、ポスト構造主義、社会構成主義、そしてナラティヴ・セラピーに取り組んでいます。

■ 論文の要旨

 神経生物学とマインドフルネスは、ナラティヴ・セラピーに基づいた治療的会話に魅力的なアイデアを提供します。この論文では、自分が好む自己を強化し、トラウマ体験にもかかわらず自分の価値観に従って生きるクライアントの能力を高める 2 つの再著述の実践を紹介します。これらのアイデアの応用は、生命を脅かす病気で障害を負った新生児の生存のために 1 年以上闘った若い母親の物語で説明されています。その母親は、乳児が回復すると、衰弱させるうつ病 (「批判的な声」) に陥りました。このうつ病状態は、ナラティヴ・セラピーが開始されるまで 2 年間続きました。脳の神経可塑性を考慮すると、再著述の会話が、何年も強化されてきた闘争または逃走脳状態と、うつ病の神経ネットワークの影響を中和するのに十分なほど強力になる可能性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。この記事では、ナラティヴ・セラピーで一般的に探求される好む自己をクライアントが強化するのを支援する、神経生物学にヒントを得た 2 つの方法、つまり、身体化と肯定的な感情の発達について説明します。これらの実践によってナラティヴのワークを充実させることで、長期にわたる、強烈な、内臓に刻み込まれた感情的な問題やトラウマに苦しんでいる人々を、タイムリーかつ永続的に支援できる可能性が高まります。

 

■ マリー=ナタリー・ボードイン(Mare-Nathalie Beaudoin)について

 マリー=ナタリーは、カリフォルニア州サンノゼにあるナラティヴ・セラピー、神経生物学、マインドフルネスのトレーニングセンターを運営し、子供、大人、家族にセラピーを提供しています。彼女は、人間生物学のこれまでの研究とナラティヴ・セラピーを組み合わせることで、セラピーの会話を強化する新しい方法を探ることを楽しんでいます。彼女は、いくつかの記事、本、DVDを出版しています。即興劇の経験を持つマリー・ナタリーは、楽しくて考えさせられるプレゼンテーションで世界的に知られています。彼女は、自由な時間には、夫と2人のティーンエイジャーと一緒にハイキング、ダンス、パドルボードを楽しんでいます。

 

■ マリー=ナタリー・ボードインの最近の著作

Marie-Nathalie Beaudoin & Gerald Monk(2024)Narrative Practices and Emotions: 40+ Ways to Support the Emergence of Flourishing Identities. W W Norton.
Amazon: https://amzn.to/3E3efkx

■ 参考図書

小森康永、デイヴィッド・デンボロウ、岸本寛史、安達映子、森岡 正芳(2023)ナラティヴと情動: 身体に根差した会話をもとめて 北大路書房

 

※参加方法および資料の入手方法について:本プログラムに申込完了後、Peatixにログインしていただき、「マイチケット」を選択してください。本イベントのチケットにある「イベントに参加」ボタンを押しますと、参加にあたって必要な情報(ZOOMアドレスと資料のダウンロード先)が表示されます。なお資料は、イベント開催の数日前ぐらいまでにアップする予定です。

 

日時:2025年4月22日(月)19:30~22:00
開催形式:オンライン(ZOOM)
今回のプレゼンター:佐藤衛
ファシリテーター:国重浩一、横山克貴、白坂葉子
当日参加チケット、及び録画視聴券:¥3,850(¥3,500+税)
参加枠:45名ほど
*録画視聴可能期間は、3か月となります。

*本イベントに参加される際は、この論文を日本語に翻訳したものを共有します。

申込先:https://npaccnohondana202504.peatix.com

領収書について:Peatixでは、「インボイス制度に対応した適格請求書の発行」ができるようになりました。詳しくは次のリンクをご覧ください。https://help-organizer.peatix.com/ja-JP/support/solutions/articles/44002459755-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%A4%E3%82%B9%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AB%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%97%E3%81%9F%E9%81%A9%E6%A0%BC%E8%AB%8B%E6%B1%82%E6%9B%B8%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

主催:ナラティヴ実践協働研究センター