【OW&Rチームとは】

 カウンセリングという援助活動においては、相談に来たクライエントとカウンセラーが1対1で話をする、という構造が長らく受け継がれてきました。しかし、この構造に縛られない新しい構造を持つアプローチが提唱・実践され、その可能性が認められてきています。それは、クライエントとカウンセラーとは異なる位置づけの者を招き入れることで、カウンセリングの会話をより豊かなものに発展させていくことです。
 これは、北欧の精神科医であったトム・アンデルセンの「リフレクティングチーム」、そしてナラティヴ・セラピーの創始者であるマイケル・ホワイトの「アウトサイダーウィットネス」として実践されました。ナラティヴ実践協働研究センター(以下、NPACC)では、双方に敬意を払い、これを「アウトサイダーウィットネス&リフレクティングチーム」(以下、OW&Rチーム)と呼びます。

 NPACCでは、OW&Rチームを活用してカウンセリングを提供することにしています。基本的に、OW&Rチームへの参加者は、NPACCカウンセラーや実践トレーニングコース訓練生となりますが、NPACC主催のコースと課題を修了した対人援助職にある人々も参加できるようなプログラムを提供することにしました。

 このチームに参加することによって、クライエントの人生に貢献し、そして、ナラティヴ・セラピーの経過に関わる機会を持つことができます。

【OW&Rチームに参加するための準備コース】

OW&Rチームへ参加するためには、次のような手順が必要となります。
1.NPACC主催「OW&Rチーム・ワークショップ」(二日間、有料)への参加
2.「OW&Rチーム・ワークショップ」終了後、アサインメントを提出しパスすること。審査料は、ワークショップの参加料に含まれます。

※1 「OW&Rチーム・ワークショップ」は不定期に開催します。NPACCのウェブサイトやFacebookで公示します。
※2 アサインメントは、OW&Rチームとして、人の人生の物語にどのように反応できるのかについて、記述してもらうものです。批判、アドバイスまたは称賛のような、上から目線の発言をしないことが求められます。
※3 アサインメントにパスしなかった場合、もう一度「OW&Rチーム・ワークショップ」を受けてもらうことをおすすめします。また、NPACCが指定する課題図書をしっかりと読み込んだ上で、再度アサインメントの審査を申し込むこともできます。この際には有料となります。

【OW&Rチーム実践参加コース】

 NPACCで実施されるカウンセリングに、OW&Rチームとして参加するプログラムです。OW&Rチームとしてのカウンセリングへの参加権を購入することで、その回数分、カウンセリングに参加することができます。この実践参加コースは何度でも購入することができます。
 コース購入費(10セッション分):30,000円

【OW&Rチームの流れ】

 OW&Rチームを伴うカウンセリングの展開はシンプルです。

1.カウンセラーとクライエントの間で、通常のカウンセリングが行われます。その間、OW&Rチームは少し離れてその会話に耳を傾けます。

2.そして、区切りのいいタイミングで、カウンセラーがその会話を一旦ストップし、それに代わってOW&Rチームの会話が始まります。
 OW&Rチームは、それまでの会話やクライエントの話の中で、自分の注意を引いた表現や、そこから得たイメージ、そして、それがなぜ自分の琴線に触れたのかや、その物語を聞いたことで自分の人生がどんな影響を受けたのかを言葉にしていきます。OW&Rチームの会話は、クライエントやカウンセリングのプロセスを、評価したり、非難したり、アドバイスを提供するものではありません。
 OW&Rチームの会話中、クライエント本人は、一歩下がってその会話を聞きながら、今話題としていることについて考えを巡らせることがです。

3.OW&Rチームの話が終わった後は、再度カウンセラーとクライエントとの会話が行われます。クライエントは、OW&Rチームの発言を聞いて何を思い、感じ、考えたかについて話しながら、またカウンセリングの会話を進めていきます。

【OW&Rチームの会話への貢献】

 OW&Rチームの会話によって、カウンセリングで生じる会話をより豊かなものにしていきます。

 OW&Rチームの会話は、クライエントが一休みし、今話してきたことを振り返る「間」を作ることにつながります。一対一のカウンセリングでは、会話の最中、クライエントはカウンセラーと話し続けなければなりません。もちろん、そのことも大変意味がありますが、一方で、会話の間に自分の考えていることや話したことを振り返ることは難しいものです。OW&Rがチーム内で会話を交わしている間、クライエントは自分が話してきたことを振り返ることができます。

 しかも、OW&Rチームの会話を聞くことは、今話題としていることについての新しい視点や見方につながる可能性をもたらします。人の話を聞く中で、「そういう考え方もあるんだ」「そんなことは考えたことなかったな」と感じた経験には、身に覚えがある人も多いのではないでしょうか。OW&Rチームの会話は、そうした新しい視点への気づきにつながる可能性を秘めています。

 そして、OW&Rチームを通して、より多くの人に自分の物語を聞いてもらうという経験は、クライエントにとって大切な機会になるものだと、NPACCでは考えています。困難な状況における自分の苦悩や努力の道程、そこにある様々な思い、あるいは自分の大切にしてきた価値観や希望など、自分の人生の物語が多くの人に認められることは、クライエントにとって大切な機会となるのではないかと考えます。

【対人援助職の継続的な学びの機会として】

 NPACCでは、OW&Rチームは、そこに参加するカウンセラーや対人援助職にとって、職業的な専門性を継続的に高めていく学びの機会になると考えています。まず、OW&Rチームの参加者は、その活動を通して、数多くのカウンセリングの会話に触れることができます。自分以外の者が行うカウンセリング実践を目にすることが、学びの機会として重要であることは言うまでもないでしょう。また、ある人がどんな時にどんな困難を体験してきたのか、何が助けとなり、どのようにして人生を取り戻していくのか、クライエント一人一人の物語や会話の展開を知ることもまた、対人援助の実践において大切な経験です。

 しかも、OW&Rチームでは、参加者は単なる見学者ではありません。誰かの物語に真摯に耳を傾けること、その中で自分に共鳴するものを感じ、自分の物語をも言葉にすること、それにクライエントがどう共鳴していくのか、こうしたOW&Rチームを通して得られる経験は、対人援助の実践家にとって重要な経験を蓄積していくことにつながります。

【留意事項】

・ OW&Rチーム参加プログラムの参加者は、OW&Rチームへの参加を通して、実際のカウンセリングに関わるとともに、そこで話される内容、クライエントの個人情報に触れることになります。そのため、カウンセリング・プロセスの有益性と安全性を確保するために、NPACCが別に定める「アウトサイダーウィットネス&リフレクティングチーム参加規約および遵守事項」を遵守し、クライエントの個人情報の保護に最大限の注意を払っていただきます。

・ 上述の参加規約および遵守事項にも記載していますが、クライエントの安全を確保するために、OW&Rチームとしてカウンセリングへの参加が尚早であるとNPACCが判断した場合には、参加を制限する場合があります。

・ OW&Rチームの実施は、カウンセリングの実施状況や、クライエントの希望、カウンセラーの判断など複数の要因に左右されます。そのため、OW&Rチーム実践参加コースは、NPACCの提供するすべてのカウンセリングセッションへの参加機会を確約するものではありません。