「ナラティヴ・セラピーのダイアログ」を刊行にあったって

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本書は、「ナラティヴ・セラピー」という、新しいカウンセリングの会話について書かれた本です。この方法は、オーストラリアやニュージーランドで形作られ、今日本で少しずつ、その大切さの認識が広まっているカウンセリングの方法です。本書は、ナラティヴ・セラピーのカウンセリングの実際の会話に触れることで、ナラティヴ・セラピーやカウンセリングについて、読んだ人が考えを発展させていく手助けになるようにと作られました。

編著者である国重浩一は、ニュージーランドでこの方法を学び、書籍の翻訳やワークショップ・セミナーの開催を通してこのアプローチの普及に努めてきました。同じく編著者の横山克貴もニュージーランドに留学してこれを学び、日本で実践に取り組んでいます。また、著者の方々も皆、このナラティヴ・セラピーという方法に興味を持ち、学び、それぞれに取り組んでいる方々になります。

本書は、非常に特徴的な構成をしています。まず、ナラティヴ・セラピーをベースにした実際のカウンセリングの会話がまるまる4つ収録されています。そして、相談をする側の人(クライアント)が、その時々で何を考えていていたか、どう感じていたかを、逐語記録の中で説明してくれています。さらに、そのカウンセリングの会話がどのようなものだったか、いったい何が起こったのかを、3人の解説者が3通りの仕方で解説を行っています。

このような形の本は、日本はもちろん世界でもなかなかないのではないかと思います。カウンセリングについて書かれた本の多くは、そもそも実際のカウンセリングを収録することはほとんどなく、あっても、ある熟達したカウンセラーが自分一人でそのやり方を解説するということが多いのです。

この本は、支援をする側であるカウンセラーの知識や考えではなく、実際にカウンセリングを受ける側のクライアント自身の体験を中心に置くこと、そして、一つの正解のやり方を提示するのではなく、多様な視点でカウンセリングの会話を見られるようにすることにこだわって作られています。その方が、きっと読む人に実り豊かなものを提供するのではないかと思っています。

ちなみに、本書は、実際のカウンセリングの会話が中心で、専門的な言葉もそんなに使われてはいません(出てきても、それを知らない人が読めるように気をつけて書いています)。ですので、興味のある方は、「自分は専門じゃないから」と心配せずに、是非読んでいただけたら嬉しいと思っています。

どうぞ手に取って楽しんでいただけたら幸いです。

2020年3月1日

ナラティヴ実践協働研究センター センター長
横山克貴